「展開」脳と「因数分解」脳

マンガの配架方法について答えが見つからないので、しばらく「寝かす」ことにして、今日はRefの話題を書き込みます。
先週、大学生と思われる方から「市内にある某ショッピング・モールのOPEN当初からの、モールに入っている店の推移がわかる資料はないか?」という問い合わせを受けました。

モールは、バブル崩壊前後にできたもので、その当時の新聞折込広告などは無く、市の産業課に問い合わせても資料はありませんでした。
郷土系資料はアウト。一般的資料「るるぶ」や「まっぷる」で出されているガイドブックにもモール全体の紹介はあっても、店の1軒1軒まで紹介しているものはありませんでした。インターネット情報でモールがいつできたか、オープンしたかを確定してその当時の新聞記事をチェックしようということになりましたが、モールと同時に売り出されたマンションの広告記事や首長のモールが出来て自治体が活性化されることへの期待などが述べられた記事はみつけられましたが、答えの参考になるものはありませんでした。
そんななか、唯一2000年当時のモールの中の店の状況に触れられていたのが

「アウトレットモール完全ガイド」 新紀元社 2000年
ISBN 4-88317-838-2

2000年頃からそうしたモールがどんどん出来ているのに、これ以降こうしたショッピング・モールを題材にしたガイドブックが出版されていないことにまず驚きました。
当館では、この本購入していたのですが、モールの所在地が合併して同じ自治体になった地域にあったということもあり、除籍されていました。合併した地域の図書館で捨てずに残っていて助かりました。

この事例を普遍的に考えてみて、将来の図書館利用に対して一抹の不安がよぎりました。
当館に限らず除籍、廃棄作業が出版年や貸出回数だけを見て機械的に処理されているのではないか?目次などを確認して作業しているのかという不安です。

先ほど紹介した資料は1999年ないしは2000年当時の店の紹介だけで、質問者の要求にはまったく応えられるものではなかったのですが、連絡してこの件は終了したのですが、後日談があります。

私と入れ替わりで地域館に行った郷土資料を長く担当している職員に、電話で相談したら「住宅地図見れば、いいんじゃない」の一言。

早速チェックしたら、ちゃんと載っていました。住宅地図は1年程度で更新され質問者の要求にほぼ応えられると思います。

カウンターに立つとほぼ毎回のように利用者に要求され、多くの図書館で利用頻度が最も多いと思われる資料の存在を忘れていました。自分たちも業務や私事でも飽きるくらい見慣れているのに・・・

中学以来、私は数学が苦手です。「展開」と「因数分解」。私は「展開」は難なく解けるのですが、逆ベクトルの「因数分解」さっぱりで散々な結果に。
Refを受けるときの多くは「回答」を知りません。戦略を立てつつも様々な資料に当たっていく作業は、大変だけど面白いと感じる図書館員は多いんじゃないでしょうか。私自身はものすごく整理ベタな人間でもあり、とっちらかっていく作業が好きで、こうした作業は「展開」に似ているように感じます。一方、質問を受けた時から答えが分かっている、「あれ」を見れば答えが書いてあるという質問に向かうのは「因数分解」的なイメージなんです。回答に向かって一直線的なスマートな感じというのでしょうか。

ここ数年、県内の参考調査の研修で、受講者ではなく問題を出題し受講者に解いてもらうという立場になりつつありますが、出題は実際に受けた質問をアレンジして出すこともありますが、回答者に基本図書をじかに触ってほしいということもあり、回答者と逆のプロセスで問題を作成するという作業を行うという機会をいただいています。本当はこうした両方の演習を多くの人がこなす必要があるのではないでしょうか。「展開」だけでは数学の知識があがらないのと同様に。