中島作品紹介12−6

予告どおり「歌姫」について書きます。この曲は8分12秒と長い曲ですが、長さを感じさせません。現在私がプログレやらテクノを聴けるのは、みゆきさんの音楽で長い曲に堪える力と、アルバム単位で聴くということを訓練されたからかもしれません。
冒頭「淋しいなんて口に出したら 誰もみんな うとましくて逃げ出してゆく/淋しくなんかないと笑えば 淋しい荷物 肩の上でなお重くなる」のところは、3作前のラスト「断崖−親愛なる者へ」の「風は北向き〜寒いとみんな逃げてしまう」の別の言い回しに思えます。こうした言葉のが聴く人たちを勇気づけます。3番の歌詞は「成人世代」と「誘惑」の歌詞を足して割ったような感じがします。「男はいつも嘘がうまいね 女よりも子供よりも嘘がうまいね/女はいつも嘘が好きだね 昨日よりも明日よりも嘘が好きだね」のところ。中島作品には男女を対比させて書かれるものも多く、唐突に「子供」という単語が出てくる例がいくつかあり安易な印象。そうした部分が有るにしても「握りこぶしの中にあるように見せた夢を もう二年 もう十年 忘れすてるまで/歌姫 スカートの裾を 歌姫 潮風になげて 夢も哀しみも欲望も歌い流してくれ」で浄化され、感動的に終わるのだ。